未知の世界
私は現在不妊治療中だ。
家族と親しい友達にしかそのことは告げてない。あえて言う必要がないからだ。
不妊治療と一言で言っても様々な治療方法がある。当事者にならないとなかなか詳しく知る機会はないだろう。
私が現在行なっているのは体外受精だ。
他の方法は試してない。
クリニックに行く前からインターネットなどで色々検索し調べたつもりだったが、体外受精がいまいちどのような手順で行うのか分からなかったから不安だった。しかも人気のあるクリニックだから予約がなかなか取れずかなり待った。
その期間中ずっと焦りも不安もあったし、同じように悩んでいた友達からの妊娠報告などもあり嬉しい反面、精神的に追い詰められてもいた。私だって早く皆に報告したい。その思いが日々募ってしまう。自分が嫌いになった。この感情は経験した人にしか分からないだろう。なので未経験者にとやかく言われたくはない。
そんなこんなで一部の友達と少し距離を置きつつ始まった治療。
悩みを相談したり共有できるのは家族だけ。本当にありがたい存在。心の支えだ。
正直未知の治療だし、私自身持病も抱えているのでそんなにスムーズには進まないだろうなとは覚悟して、あまり過度な期待はせずに臨んだ。
生理がきてからホルモン剤などを飲んだりする準備期間を終え、いよいよ採卵期間へ入る。
正直ホルモン補充期間もしんどかった。
薬が合わずめまいが止まらなかったり吐き気がしたりしてすぐに薬を変えてもらった。そしたらとても楽になった。
採卵は局所麻酔はするがとても痛そうだと調べたら分かった。そして、採卵日までの間は何度もクリニックに通い採血や内診、家では決められた日に自己注射を行い飲み薬も飲む。
なかなかハードな日々だった。それが10日程続き、時期を見ての採卵だ。
とても緊張していた。痛みも覚悟し足取りは重かったが、とにかくクリニックへ向かった。
早めに着いたので少し待ったがわりとすぐ呼ばれオペ室へ入った。着替えて横になった。
看護師さんが優しく声をかけてくれた。
血圧などを測り、いよいよ採卵。
緊張がピークに達した。はたして痛みに耐えられるんだろうか?
消毒後、表面麻酔を塗った後に局所麻酔を打った。そこまではたいして痛くなかった。
でもそのあと先生が卵胞に針を刺す度に下腹部に鈍いような鋭いような味わったことのないような痛みが走った。
つらい…頼むから早く終わってくれ…
そう思っているといつの間にか終わっていた。
体感時間は5分くらい。
そのあと40分くらい別室で横になっていた。
痛み止めの座薬が効いてくるまでは重い生理痛のような鈍痛が続いた。
その後、診察室に呼ばれ採卵結果を聞いた。
5.6個取れたようだったが、そのうち胚盤胞まで成長できるのは??まだ分からない。
そこまで成長するまで5日程は待たなければいけない。
もう採卵はしばらくしたくない。何とか育って欲しい…それだけ。信じて祈るしかない。
5日後、クリニックへ向かった。
すぐに診察室へ呼ばれて入った。
何て言われるだろうか?
胚盤胞3つも出来ましたよ!!
え!?そんなに!?
ちょっと予想外だった。
良くても1個かな?と思っていたので、とても嬉しかったしありがたい気持ちでいっぱいになった。
大事に育ててくれて本当にありがとうございます!!
と、先生や看護師さん、培養士さん達にお礼を言いたい。
でも、この時点ではまだ治療が終わったわけではないのだ。喜ぶのはまだ早い。
この後、卵は一度凍結し、準備期間を経ての胚移植となる。そこまで約1ヶ月。
どうなるだろうか?
今は時が来るのを待つしかない。
明るい未来を待つしかない。